四、

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 寮でも皆、泣いて笑ってもみくちゃになりそうな勢いで迎えてくれた。 「やっと全員揃ったんだからお祝いしないと!」  謙太の一言で夕食はお祭り騒ぎだ。 「次、お肉調達!」 「はい! 私行きます! 何キロにします⁉︎」 「じゃあ俺達は野菜か。そっちに荷物持ちいるよな?」 「なら私は咲希先輩が好きなケーキ屋さんのケーキ買ってきますねー!」 「じゃあ1年2年は俺とテーブルセッティングな!」  統率のとれた動きで買い出しと用意が進み。 「私がいていいの?」  なんて気にする華は。 「え、でも先輩も咲希先輩といたいですよね?」 「俺らもいたいんで、それを同時に叶えるにはいてもらわないといけないんですけど!」  眞子と宏太が一瞬で説き伏せて。 「じゃあ飲み物行き渡ったな? 副寮長の半年ぶりの帰宅と寮長の一週間ぶりの帰宅を祝ってー乾杯!」 『乾杯っ!』  博の音頭でパーティーが始まった。  先端技術科でのパーティーはいつだって楽しかったけれど、今日は特に頬が緩んで仕方ない。 「皆、用意してくれてありがとう。本当に美味しそう!」 「咲希先輩は主役ですからねー! 座っててください!」 「私達がとってあげます! 慧先輩も!」 「おーい、肉焼くぞ!」 「哲平おねがーい!」 「わかってるって」  全員が揃ってる。全員が何の憂いもなく笑っている。  あれだけ泣きじゃくっていた京子や佳那が。真っ青な顔をしていた順や泰雅、珠里が。表情をなくして立ち尽くしていた哲平や歌までもが。皆、これでもかというくらい笑っている。  祖父の屋敷にいた半年間、夢にまで見た光景が目の前に広がっている。 「哲平、私も焼く!」 「え、咲希先輩⁉︎」 「代わって?」 「火傷しないでくださいね⁉︎」 「咲希、気をつけろよ?」 「わかってるって!」  ふわふわした気持ちは中々抑えられそうになかった。
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