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皆でお肉を焼いて、焼きそばやサラダ、マリネなんかも作った上にレストランからのデリバリーも受け取れば、テーブルの上はご馳走でいっぱいになる。それをすごいスピードで片付けながらも話は止まらない。
「散歩に行こうとしてたらジスランがいきなり走り出したんだ! 今まで一度もそんな事なかったのに!」
謙太が嬉しそうに言うと、華と博も笑って頷く。
「咲希が帰って来た事がわかったんだね」
「本当に賢いよな」
玄関を開けた瞬間に飛び出してったから本気で慌てたんだぞ。博の言葉に、慌てて追いかけてくれたであろう三人の姿が目に浮かぶ。
「変わった事はなかったか?」
今度は隣に座る慧だ。
「変わった事だらけだよ」
両手を軽く広げて見せる博に、謙太も乗っかった。
「なんか色んな車が来て本部や校舎を捜査してさ。おかげで今日まで三日間授業も休み! 他の寮から聞いたんだけど、先生達が車で外に連れて行かれてるのを見たって」
「あ、でもちゃんと勉強してましたからねー! 博先輩と謙太先輩が教えてくれて!」
「皆で下級生フォローしながら、勉強会したんです」
ご馳走が大盛りに盛られたお皿を持ってやって来た京子と佳那は、褒めてくださいとばかりに咲希と慧の間に収まろうとする。少し椅子をずらして二人を入れると、二人の表情は更に明るくなった。
「ランクも誰一人落とさなかったですからね! ご褒美ください!」
「ご褒美?」
「何だ?」
「咲希先輩の事貸してください! デートしましょ! 女子会しましょー!」
「咲希先輩とまたお出かけしたいです!」
可愛い後輩達の嬉しいおねだりに、思わず小さく吹き出してしまう。答えは決まっている。
「勿論!」
即答しかない。すると今度は離れたテーブルで椅子が大きな音を立てた。
「あー! 京子先輩、佳那先輩ずるい! 私も!」
眞子が叫べば、嬉しい事に他からも声があがった。
「ならまた女子皆でランチとショッピングとスイーツの旅やろっか!」
「やった!」
「やりますやります!」
これでこそ先端技術科だ。賑やかで笑いに溢れていて、楽しい事が大好きで。1年生だけは驚いているけれど、近くに座る湊達が説明してくれる。
女子だけが盛り上がりを見せると、男子も黙っていない。
「なら仕方ない。慧先輩、俺達もデートしておきます?」
「何でだよ」
宏太がとぼけたところに慧が突っ込んで、それがまた笑いを誘った。
「で。終わったんだな?」
盛り上がりが最高潮に達する中、切り出したのは博だ。その声は大きくはないのにやけに響き渡り、食堂から音が消える。
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