446人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ」
「うん」
同時に頷けば、寮生達の表情が一気に明るくなった。笑みを溢し、手を取り合ったり顔を見合わせたり。それでもすぐに期待に満ちた八十を超える瞳がこちらに向き直る。
「今度こそここに隠されてる思惑や裏金は全部表に出たからな。もう終わりだ」
「証拠も皆の映像も生中継されたから、これを有耶無耶にはできないよ。関係した人は皆検挙されてるし、学園がどうなっていくかはわからないけど、体罰みたいな事は一切なくなると思う。反省棟も、理不尽な校則もね」
語りかけた後、今までを労うように一人一人を見回した。皆と目が合って、直後に沸き起こったのは歓声だ。
「や……やったー! 反省棟なし⁉︎」
「うん、それは絶対なくなる」
「やった! 堅苦しい格好とも我慢ともおさらば⁉︎」
「もう堂々とデートしていいって事ですよね⁉︎」
「うん……あ、そういえば」
「全員別れてないですよ! 別れてるわけないじゃないですかっ!」
関係は変わってない? 尋ねようとした言葉は珠里によって遮られる。眞子と宏太も飛び切りの笑みを浮かべて、揃ってガッツポーズを作っている。
ーー良かった。
間に合って、皆が耐えてくれて本当に良かった。
飛び跳ねる寮生達の姿に、心からそう思う。
「今までの分も楽しい学園生活にしなきゃ」
ぽろりと溢すと、博が口角を上げた。
「頑張れよ、生徒会長」
それは激励だ。激励だけど、気になる単語があった。
「え、私生徒会長のままなの?」
思わず聞き返してしまう。
先端技術科ならいざ知らず、学園全体の生徒会長だ。半年
も不在で、しかも年度すら変わってる。誰かに代わっているものとばかり思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!