四、

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「ああ」 「うん」  同時に頷けば、寮生達の表情が一気に明るくなった。笑みを溢し、手を取り合ったり顔を見合わせたり。それでもすぐに期待に満ちた八十を超える瞳がこちらに向き直る。 「今度こそここに隠されてる思惑や裏金は全部表に出たからな。もう終わりだ」 「証拠も皆の映像も生中継されたから、これを有耶無耶にはできないよ。関係した人は皆検挙されてるし、学園がどうなっていくかはわからないけど、体罰みたいな事は一切なくなると思う。反省棟も、理不尽な校則もね」  語りかけた後、今までを労うように一人一人を見回した。皆と目が合って、直後に沸き起こったのは歓声だ。 「や……やったー! 反省棟なし⁉︎」 「うん、それは絶対なくなる」 「やった! 堅苦しい格好とも我慢ともおさらば⁉︎」 「もう堂々とデートしていいって事ですよね⁉︎」 「うん……あ、そういえば」 「全員別れてないですよ! 別れてるわけないじゃないですかっ!」  関係は変わってない? 尋ねようとした言葉は珠里によって遮られる。眞子と宏太も飛び切りの笑みを浮かべて、揃ってガッツポーズを作っている。  ーー良かった。  間に合って、皆が耐えてくれて本当に良かった。  飛び跳ねる寮生達の姿に、心からそう思う。 「今までの分も楽しい学園生活にしなきゃ」  ぽろりと溢すと、博が口角を上げた。 「頑張れよ、生徒会長」  それは激励だ。激励だけど、気になる単語があった。 「え、私生徒会長のままなの?」  思わず聞き返してしまう。  先端技術科ならいざ知らず、学園全体の生徒会長だ。半年 も不在で、しかも年度すら変わってる。誰かに代わっているものとばかり思っていた。    
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