四、

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 呆れたような言葉は慧から漏れた。 「誰がやるんだよ」 「今の7、8年に先端技術科に喧嘩を売って立候補する勇気がある奴なんていないって!」 「謙太もほぼ生徒会みたいなもんだし、校則のせいでできる事減って、仕事も少なかったから全然回るしな」  華と博も当たり前の事のように笑い飛ばしてくれる。  ーーそうか。  納得しかけたけれどそこは先端技術科。最後に爆弾が待っている。 「何より慧先輩が事あるごとに俺は生徒会長代理だって言い切ってましたから! 咲希先輩は絶対に帰って来るからーって。誰も何も言えないですよねー!」 「おいっ!」  ご機嫌な眞子を宏太が慌てて止めるけど、もう遅い。ちゃんと聞いてしまった。 「慧がそんな事言ってたの?」 「はい! 新学期に生徒会長選挙の話が出なかったのは慧先輩の威嚇のお陰だと睨んでます!」  隣を見れば、わざとらしくこちらを顔を逸らしているおかげで表情はわからない。でも耳が赤いように見えるのはきっと気のせいじゃない。 「守っててくれたんだ」  私が帰る場所を。 「だからなんだよ」  素っ気ない返事がおかしくて、また笑えてくる。  これからやりたい事がたくさんある。  自分がネデナ学園に入って、先端技術科に入って良かったと心から思うから、他の生徒にもそう思ってほしい。皆が笑って卒業できるようになればいい。 「付き合ってね」 「ああ」  それを合図に食堂内はまた喧騒を取り戻した。 「先輩、そろそろケーキ出しましょー! 何にしますー⁉︎」 「紅茶淹れよう!」 「今日は寝ないぞー」 「ちょっと、明日学校じゃないの?」 「来週まで休校です!」 「パジャマパーティーにする?」 「謙太先輩、ナイスアイデア!」  嬉しくて、楽しくて、安心して。半年以上ぶりの騒ぎは真夜中まで続いた。
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