四、

8/33
前へ
/218ページ
次へ
 登校日までは好きな事をたくさんした。  皆でショップ街に出かけたり美味しいものを食べたり。バーベキューもしたし姫発案の百人一首大会も暫くぶりに開催した。勿論遊んでばかりではいられないから、勉強会や班活動もしたし体を戻すためにジスランとジョギングもした。  そうしてついにやって来た登校日。  咲希は昔のように鏡の前で制服に腕を通した。  水色のシャツに学園指定のスカート。ハイソックスは夏らしく白にして、髪もポニーテールにした。メイクは春奈さんおすすめのラメ入りアイシャドウに、青みピンクのチークとリップだ。最後に犬の足跡のチャームのネックレスとブレスレットをつければ準備完了。 「よし」  鏡に写る渾身の出来に小さく頷いた。 「できたか?」 「うん」  クローゼットの入口にはいつの間にか慧とジスランが立っていた。 「似合ってる?」  ブレスレットをつけた手を振ってみせると、慧の口角が上がる。 「当たり前だろ」  それがくすぐったくて嬉しくもある。 「行こっか」 「ああ」  尻尾を振るジスランを二人で撫でてから、揃って部屋を出た。  階段を降りた先には博と謙太が待っていた。 「はよ」 「おはよ」  こちらを見上げる二人の表情は柔らかい。この待ち合わせは1年生の時から変わらないのに、随分変わった。  博は昔の刺々しさが嘘のようにとっつきやすくなった。寮生にとっては頼りになるお兄さんで、わからない後輩にはつきっきりで丁寧に教えてくれる。  謙太は昔の小柄で可愛らしい感じから、物腰柔らかい好青年になった。よく周りを見てくれて、些細な変化にもすぐに気づいてくれる。 「おはよ……こうやって見ると咲希と学校に行くの久しぶりだね」 「おはよ」  最後の数段を駆け降りた。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

446人が本棚に入れています
本棚に追加