四、

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 時間はギリギリ。他の寮生は全員出た後で、寮どころか外にも人気はない。広い道を四人で並んで歩く。 「今日のお昼どうする?」 「咲希は何食べたい?」 「えー、この一週間好きなもの食べさせてもらったから何でも」 「確かにすごい量食べてたもんな」 「一人で食べる食事ってほんっとーに味気ないんだもん!」 「女子全員でケーキビュッフェも行ったんでしょ?」 「そう! 新しくできてたところ、デザートビュッフェだけど食事も美味しくて皆喜んでた! 女子だけだと不公平だから男子会もしてあげてね」 「りょーかい!」 「どこ行く?」  するのはとりとめのない話ばかり。晴れ晴れとした気持ちで歩く通学路はあっという間に過ぎ去った。  そして、懐かしい校舎に足を踏み入れる。この間は感慨にふける余裕なんてなかった。  埃一つ見えない大理石の床に傷一つない白い壁。吹き抜けから太陽の光が降り注ぐ玄関ホール。校舎は入学した時から変わらない。変わらず広く豪華で清潔に保たれている。  だけど。 「……騒がしい?」 「だな」  校舎の中はざわついていた。どこか一箇所とか、数人が煩いわけじゃない。どの教室からも大勢の賑やかな声が聞こえてきて、それは階段を上っても変わらなかった。  今までなら低ランクが騒げば高ランクが黙らせた。だから騒がしかったとしても限られていて、ここまでの騒ぎになるのは評価に関係ない終業式の日くらいだ。  その喧騒は8年生の廊下でも変わらなかった。博と別れて、久しぶりの教室の前に立つ。一つ息を吸ってから扉を開けた。 「おはよう」  教室は一瞬で静まり返り、教室中の視線を浴びる事になった。
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