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時間はギリギリ。他の寮生は全員出た後で、寮どころか外にも人気はない。広い道を四人で並んで歩く。
「今日のお昼どうする?」
「咲希は何食べたい?」
「えー、この一週間好きなもの食べさせてもらったから何でも」
「確かにすごい量食べてたもんな」
「一人で食べる食事ってほんっとーに味気ないんだもん!」
「女子全員でケーキビュッフェも行ったんでしょ?」
「そう! 新しくできてたところ、デザートビュッフェだけど食事も美味しくて皆喜んでた! 女子だけだと不公平だから男子会もしてあげてね」
「りょーかい!」
「どこ行く?」
するのはとりとめのない話ばかり。晴れ晴れとした気持ちで歩く通学路はあっという間に過ぎ去った。
そして、懐かしい校舎に足を踏み入れる。この間は感慨にふける余裕なんてなかった。
埃一つ見えない大理石の床に傷一つない白い壁。吹き抜けから太陽の光が降り注ぐ玄関ホール。校舎は入学した時から変わらない。変わらず広く豪華で清潔に保たれている。
だけど。
「……騒がしい?」
「だな」
校舎の中はざわついていた。どこか一箇所とか、数人が煩いわけじゃない。どの教室からも大勢の賑やかな声が聞こえてきて、それは階段を上っても変わらなかった。
今までなら低ランクが騒げば高ランクが黙らせた。だから騒がしかったとしても限られていて、ここまでの騒ぎになるのは評価に関係ない終業式の日くらいだ。
その喧騒は8年生の廊下でも変わらなかった。博と別れて、久しぶりの教室の前に立つ。一つ息を吸ってから扉を開けた。
「おはよう」
教室は一瞬で静まり返り、教室中の視線を浴びる事になった。
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