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「皆これで騒いでたの?」
「そ。退学したら今ならいい所に編入できるんじゃないかとか、違反者申告がないならもう高ランクに媚び売らなくていいなーとかね」
華の声は静まり返った教室でよく通る。謙太は苦笑いしたけれど、華の意図は伝わってきた。
「それで? 華はどうするの?」
こちらも声を張り上げる。
「こんなところで退学なんてするわけないじゃん。咲希は?」
「私達は戻って来る前に確認されたけど、全員帰るを選んだよ。私も、慧も、尚人も、心菜もね」
わざと名前を誇張すると、クラスメイト達の頭や視線が動いたのがわかった。
慧はまだしも、尚人がCランクなのは全員が知っている事。それに心菜だって、心菜を知る人には低ランクな事はバレている筈。そんな二人も退学せずに戻って来た。その事実は少なからず衝撃を与えたらしい。
「姫達は学園に戻らなくてもいいって言ってくれたけど、皆と卒業したいし最後まで逃げたくなかったしね。勿論学園にいる事が辛いとか学園が本当に合わないとかなら退学した方がいいと思うけど、いつか後悔すると思うなら安易に楽な方に逃げない方がいいんじゃない?」
「だね。先端技術科としてはどうすんの?」
今度は慧に対してだ。
「咲希と同じだよ。自由に決めさせる。だけど後悔しない方を選べとは言うかな」
「ありがと。普通科もそう言っとこ〜」
華は言い終えるなり、染め直したばかりのブロンドヘアを指で弄んだ。これでこの話は終わりの合図だ。
こんなの何でもない事。そう見せつけるため、あえて笑って振り返る。
「先端技術科の中で誰か希望者いるかな?」
「迷ってる奴がいたら今頃咲希の携帯が鳴ってるだろ」
「あ、そっか……着信もメールも……あ、京子と眞子からクラスメイトが騒がしいですってクレームのメールが入ってるけど他はなし! 謙太は?」
「一切なし! 博からもないから、博にもきてないんじゃないかな」
軽く話しながら久々の席についた。
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