四、

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 ーーどうしよう。  考えを巡らせたところで、隣からコツコツと二回、爪で机を叩く音がした。 「なあ」  慧だ。 「授業を受ける気がないなら帰れよ」  怒っているわけでも怒鳴っているわけでもない。ただ少し大きな声でクラス中に話しかけただけ。それでも効果はてきめん。 「あ……」 「いや……」  話し声は一瞬でなくなり、教室はあるべき姿へと戻った。 「えっと……」 「先生、授業を始めてください」 「あ、ああ。ありがとう」  鈴木先生は少し戸惑ったようだけど、すぐに後ろに向き直ってペンを走らせていく。【数理統計学。】クラスメイト達はその文字が現れてようやく授業の準備に動き出した。  騒ぎはショップ街でも変わらなかった。  せっかくの昼休みだというのに、至る所から聞こえてくる話は楽しい物ではない。  新しい先生達に対する憶測やランク間の差の是正への不満、中には今退学したら授業料や生活費丸儲けじゃんなんて会話や違反者申告がなくなったから何でもできるなんていう心ない言葉まで。 「これは……」 「嫌な予感しかしないな」  謙太はレストラン内を見回しながら、慧は醤油を小皿に注ぎながら、共に顔を顰めた。 「あそこにいる奴らとか昔を思い出すのは俺だけか?」 「……それって2年生の頃だったりするよね?」 「ああ。咲希の片割れも加わってたやつ」 「あー……」  博は円卓を回しながら怖い事を言い出すし。 「うん、決めた! 普通科は退学希望者止めないわ! 勝手にさせよ!」  華は前菜を突きながら、声高らかに誓い出す。
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