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「止めてあげないの? 軽い気持ちで退学したら後々後悔するんじゃない?」
「どうせここで退学なんて言う奴ら、一回止めてもまた同じ事繰り返しそうじゃーん」
「そうだけど……」
「見ろよ」
話を遮った博の視線はレストランの外に向いていた。4、5年生くらいの生徒達が十人ほど顔を突き合わせて何かを話してる。
クリスマスパーティーの常連達の顔は覚えているけど、見ない顔。という事は。
「あ、あれ半分くらいうちのCランクだわ。4年生だと思う」
予想は的中した。
華が半分くらいという事は、残り半分は違う寮。違う寮同士のCランクがショップ街の外れの道でひそひそ話しているなんて。
「……嫌な予感がするんだけど」
「奇遇だな、俺もだ」
「俺も」
「私も」
「僕も」
顔を見合わせて息をつく。だけど嫌な予感はするものの、どうにかなるなんていう楽観的な気持ちもあった。
そんな時だ。
「お待たせ致しました。満漢全席ランチコースでございます」
ちょうど料理が運ばれてきて、円卓がお皿でいっぱいになった。
「ま、後から考える事にしてご飯食べよ」
「お、強気だな」
「だって……ねえ。今まであれだけドキドキとか怖さを味わったらもう怖い物なくなっちゃうよ」
「それもそうか」
慧はそう言いながら咲希の分まで醤油を注いでくれる。有り難く受け取りながら、もう一度だけ外の集団に目を向けた。
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