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「まああれはないよな」
博は苦笑いを浮かべながら、戸棚からクッキー缶を取り出した。宏太に手渡して、二人の向かいに座る。
「ですよね⁉︎ 差別はダメだとか言いながらそっちの方が差別してるじゃないかって思いますよ!」
「うちのクラスはそこまで酷くなかったけど、隣のクラスは喧嘩みたいになっちゃって授業にならなかったみたいですよー」
眞子はそそくさとクッキー缶を開けているけれど興奮は収まらないらしい。
怒っていても甘い物はしっかり食べる姿が微笑ましくて、思わず笑ってしまう。時計を見ればちょうど二十分。そろそろいい頃だ。
「生徒皆が過ごしやすい環境にっていう話の筈が、いつの間にか特別扱いされてる高ランクがいけない、みたいにすり替えられてるよね」
話しながら鍋の蓋を開けると、紅茶の濃い香りが勢いよく広がった。
「そうなんですよ!」
「私達何も悪い事してないし、今までの学園のルールに則って頑張っただけなのに!」
「わかる! そんな羨ましいなら努力しろって感じだよね⁉︎」
今度は華。華は怒ってみせながらも氷を目一杯入れたグラスを次々とこちらに渡してくれる。そのグラスにお玉一杯の紅茶を注いで慧に渡していけば。
「ほら、とりあえず飲め。柚子先輩直伝のアイスティーだ」
「わーい!」
「ありがとうございます」
先端技術科伝統の『何かあった時はとりあえずアフタヌーンティー』の用意が整った。
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