四、

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 すぐ隣から振られ、咲希はストローに伸ばしていた手をテーブルに置いた。 「……学園は今度は別の意味で見て見ぬふりで、生徒が困っても何もしてくれないよね」 「ああ」 「先生達もそう。外に知られたら困る事は改善しようとしても、生徒の声なんて聞いてくれてない」 「事なかれ主義なんだろ」 「教員免許を持ってる公務員を緊急であてがったって感じだもんな。数ヶ月の臨時教員だし何事もなく終えたいっていうのが行動に出てる」  語りかけると慧は頷き、博は吐き捨てるように同意してくれる。他の皆も目は真っ直ぐ。何も言わなくても考えは同じだ。 「でね。考えたんだけど、先生達が世間体を一番に気にしてるって事は、世間的に見て正しい事なら許されるって事じゃない?」 「まあ……」 「それはそうだよな」  低ランクが迫害されていると声を上げれば、緊急職員会議が開かれてすぐに待遇が改善された。でも高ランクが教室を飛び出しても、困った表情はしても授業を中断して追いかけるような事はしなかった。 『世に知られて』『非難される事だけは避けたい。』 『非難されない事は動く必要はない。』  そんな気持ちが透けて見える。  もうネデナ学園の新しいルールに振り回されるのはうんざり。ならば。 「だから生徒自治を提案するのはどうかなって」  自分達で動かせばいい。  にっこり微笑めば、向かい側に座る宏太と眞子は驚いたように顔を見合わせた。
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