四、

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 白熱した打ち合わせは六時過ぎまで続いた。気づけば夕食の時間も近づき、窓から見える太陽は夏とはいえだいぶ傾いている。 「そろそろ帰るか」 「うん……んーっ!」  慧の言葉を合図に体を伸ばすと、他の椅子も一斉に動いた。 「今日の夕ご飯なんだっけ」 「天そば。天ぷらは店の人が揚げに来てくれるって」 「やった!」 「いーなー!」  謙太と博が腰を上げると、華も大きく伸びをしながら立ち上がった。 「普通科は?」 「Aランク以上はその場で作ってくれる中華の出張レストラン!」 「ちなみにそれ以下は?」  宏太が恐る恐る尋ねれば、華は笑って顔の前で手を振ってみせる。 「今は昔ほど差ないって! レストランで作ってきてもらった料理並べてもらってビュッフェスタイル! うち人数多いから食堂も別々なの!」 「それなら良かった……?」  疑問混じりの感嘆に、周りから苦笑いが漏れた。  この時間ともなれば校舎に人気はなく、通学路も生徒の姿は疎ら。広い道は七人で歩くにも十分だ。 「あ、咲希先輩! 明日のジスランのお散歩一緒に行っていいですか⁉︎ 予約です!」 「勿論! 一緒に来てくれるの?」 「え、予約⁉︎ そんな事になってるの⁉︎」 「そうですよ! 咲希先輩がいなくなった時ガチ泣きだったんですから! 皆まだ咲希先輩成分が足りてないんです! 勉強会とか夕食後は後輩達に譲らなきゃだし慧先輩とのデートもあるでしょうから先に予約です!」  まるで少し前の女子会の続きのように三人で騒ぎながら先を歩いて行く。  でも、普通科まであと僅か。二本の木が青葉を広げる丘を越えたところで足が止まった。
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