四、

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「おい! ふざけるなよっ!」  ーー喧嘩だ。  しかもただの喧嘩じゃない。 「こんな事して許されると思ってんのかよっ!」 「なら先生に言ってみればー?」 「今までいい生活送ってきたんだからさー」 「俺達の気分も味わえってんだよ!」  明らかに人数が違う。 「こんな事してる暇があるならもっと有益な事しろよっ!」 「あー偉そう」 「どうせ俺達の事見下してるんだろ?」 「私達が掃除しててもさっさと帰っちゃうもんね」 「やらなくていい権利もらってるんだから当然だろ!」 「ほら、そうやってさー!」  一人体格がいい男の子の周りには五人の男女。会話の内容からして男の子だけAランク以上なんだろう。見た記憶がないという事は1年生だ。  男の子の周りには教科書が散らばっていて、何があったのかは簡単に想像できた。  ーーこれは放ってはおけない。   一歩踏み出した足は慧と完璧に揃った。 「こんな所で何やってるんだ」 「え」 「あ……生徒会の……」  いけない事なのは流石にわかっているらしい。五人はバツが悪そうに黙り込む。でも、それで許してはいけない。 「何をやってたの?」  冷たい声は自然と出た。  1年生と8年生。年齢がこれだけ違えば、身長も顔つきも今までの経験だって違う。集団でしか相手に向かえない生徒が、怒りを隠しもしない8年生達に立ち向かえる筈もない。  言葉より足が動く方が早かった。 「何でもないですっ!」 「な!」 「帰るところですっ!」  五人は脱兎の如く叫びながら走り去る。逃げ足だけは早くて、捕まえるには全力疾走が必要そうだ。でも。 「流石1年。爪が甘いな」 「ね……」  五人は普通科の寮を越え、一目散に体育科の寮へと走って行く。やがてその姿は寮の入口に消えて行った。
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