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そこに先生が戻って来た。
「授業を……」
散らばる教科書の類と嫌な静まり方をした教室に違和感を覚えたのだろう。一歩歩いたところで再び足が止まる。
「えっと、どうかしました?」
先生がいるのは教室前方の扉前、こちらは一番後ろの窓際。教室の端と端だ。息を吸い込んで、今度こそ声を張り上げた。
「先生、授業はどうするんですか?」
ただ聞いただけだ。それでも効果は絶大で、一瞬のざわめきと共に教室中の視線がこちらに向く。
「皆さんの時間を奪うわけにもいきませんから、このまま始めます」
「いない奴らは?」
今度は慧。
「授業への出席は自由意志という事で……勿論、卒業には何の影響もありません」
「つまり、これだけの生徒が授業をボイコットするくらい不満を示しているのに、それを無視して形だけの学校運営を続けるという事ですね?」
笑みを携えたまま尋ねると、先生は遠目からでもわかる程動揺した。
「それは……全員が満足がいく形にはできないかもしれませんが、なるべく多くの生徒にとってより良い環境となるように我々も努めていて」
「皆が不満を持つのは当然だと思いますけど? 私達にとってはこのランク毎の生活が『当たり前』で、皆ランクのために努力してきたんです。ただでさえ早い勉強カリキュラムに必死で食らい付いて、特技だって磨いて。なのにいきなりやって来た『今まで』を知らない人達が、生徒のためだと言いながら生徒の気持ちを省みる事なく一瞬でその努力を無にしてしまったんです。何年間もの努力が一瞬で、ですよ? 腹が立つのも当然だと思いません?」
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