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先生はまだ迷っているようだった。大方一人では何も言えない、約束できない。でもきっと私達にまでボイコットされるのはまずいと思ってる。
こういう煮え切らない時には姫方式に限る。
「もしこのまま有耶無耶にしてしまいたいならどうぞ。でもその時は、卒業した際に世間に全てを伝えさせていただきます。生徒が改善を訴えても決定を押し通された、授業を受けずとも卒業できたと知れたらどうでしょうね」
それが一番困りますよね?
穏やかな笑みを作ったまま暗にそう訴えれば、先生は最早身じろぎもせず固まってしまった。
もう話す事はない。ファスナーも開けたいなかった鞄を抱え直して、後方の扉に向かって歩き出す。
「てことでいいお返事待ってまーす!」
「先端技術科の皆にも好きにしていいって伝えてあります」
「大人達の手で翻弄された学園が生徒達の手で生まれ変わる。聞こえはいいと思いますよ?」
華、謙太と続き、トドメは慧だ。
教室から出ると途端にざわめきが起きたけれど、誰からも非難の声はあがらなかった。
廊下で博と合流して、そのまま先端技術科へと帰る。バルコニーで話し合いながらお茶を楽しんでいると、次々に携帯が震えた。
【あまりに馬鹿らしかったんで6年生全員出てきちゃいましたー!】
【私達も授業出ません! 談話室で勉強してます!】
【耐えられませんでした。出ます】
【佳那と哲平とお昼食べたら帰ります!】
【うちの担任、低ランクが正しいみたいな意味わからない事言い出したんですけど!】
【あまりに理不尽すぎます。授業出ません、帰ります】
その全てに【了解。気をつけて帰ってきてね】なんて返しながらその時を待つ。
〈話し合いの場を持ちましょう〉
疲れた声で電話がかかってきたのは夕方の事だった。
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