四、

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 5年生の時はこの学園に入ってから一番泣いた。最初は清次郎先輩と上手くいかなくて、寮でもギクシャクするようになった。慧はお父さんの目的を探るために普通科に移る事になってしまったし、クリスマスパーティーでは亜実先輩を連れて行かれてしまった。あの時の健司先輩は見ていられなかった。先輩達が託してくれた道を使って抜け出して、亜実先輩を取り返し、春奈さんを自由にする事ができたけど、慧はお父さんとの関係を失ったまま。辛い決断までして寮生を守ってくれる慧が愛しいと、ずっと一緒にいたいと自覚したのはこの時だった。  6年生は束の間の平和な時間だった。肩の力が抜けた清次郎先輩と戻って来た亜実先輩の下、もう一度先端技術科の在り方を考えた。全体勉強会を復活して、Aランク以上による苦手科目の補習や特別科目のコーチまでやって。全員がBランク以上に上がれた時には皆でお祝いした。華と仲良くなれたのもこの年だ。  7年生は生徒会長選挙から始まった。寮の皆だけでなく華や尚人達まで協力してくれて、無事に生徒会長になる事ができた。でも一樹と秀樹お兄さんによって校則や反省棟が作られて、生徒は恐怖で縛られていった。寮生を守りたいと思ったけれど一樹はどんどん追い詰めてくる。どうにか外に助けを求めようとしたけれど、最後は一樹の思うままにお祖父さんの家に送られた。  今年度は皆より三ヶ月遅れで始まった。学園に隠されていたモノや想いは全て明るみに出た。もう同じ事は繰り返されない。嘘だと思いたい過去や事実もたくさん知ったし無力感も味わったけれど、一樹ともう一度兄妹としてやり直せた。まどかお姉さんと秀樹お兄さんができた。心菜とまた笑い合う事ができた。学園に戻って来る事ができた。  そして今、こうして学園を変えようとしている。
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