四、

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〈現時点で退学を申し込んでいる生徒も、正午までなら取り消す事ができます。よく考えた上での決定なら私は止めません。でも、ただ楽な方を選んでしまったのだとしたらあと少しの間だけ考えて、一年後、五年後、十年後に後悔しない道を選んでください〉  ここで一度話を切った。  原稿として用意したメモはあと一枚。捲ったところで一瞬手が震えたけれど、それは慧の大きな手が止めてくれる。マイクに入らないように注意しながら一度深呼吸して、再び口を開く。 〈私は努力は認められるべきだと思っています。ですがそれで驕る事は間違いだし、他の人を蔑む権利は誰にもないと思います。少なくとも、私が尊敬する人達にそんな人は誰もいませんでした。反対に努力して力をつけた人に対して、劣等感を抱く必要も遜る必要もありません。でも、その努力は認めてください。努力して得た結果を否定するのはやめてください〉  入学してからずっと、たくさんの先輩から教えてもらってきた『守るだけの力をつけなさい』という言葉。今ならその本当の意味がわかる気がするし、ほんの少しかもしれないけどその力をつけられた気がする。  そして。 〈私達からの最初の提案はSランク・Eランクの廃止です〉  これが私達の力の使い方だ。
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