四、

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 これが正解かはわからないし、直前まで迷った。  眞子と宏太はいいと言ってくれたけれど、頑張ってきた他のSランク達の想いを踏み躙る事になるかもしれないし、Aランク達の目指す目標が無くなるかもしれない。  姫や柚子先輩、高宮先輩達がどんな気持ちでどれだけ努力してきたかもよく知っている。  でも、Eランクという存在がある限りこの学園は変われない。他人を見下してしまう人もいるし、自分より下のランクがいる事に安心してしまう人もいる。憎しみが不和を生み、また憎しみを生む。  そして、ただEランクだけを廃止してもこちらの本気は伝わらないと思った。Eランクに落ちる心配がない生徒は協力なんてしてくれないと思った。 〈本日の午後三時、退学希望者以外の全校生徒にアンケートを送ります。賛成、反対のどちらかに投票してください。コメント欄も作成したので、意見があれば入力できます。全て無記名です。結果は明日正午にお知らせします。退学希望者は明日午前十一時にバスが出ます。明日の授業に出る必要はありません。……あと三時間弱、自分が後悔しない道だけを考えてください〉  最後にもう一度想いを告げて、放送を締め括った。全ての電源を切ると、再び手が重なった。 「お疲れ」 「うん」  それ以外はお互い何も話さない。ただ手を握り合って、その時が訪れるのを静かに待ち続けた。
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