五、変わりゆく日

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「華……」  言葉にして、すぐに言葉に詰まる。華のチームメイトは大川達哉とクラスの普通科でBランクの男子生徒。ここまではいい。あともう二人は隣のクラスの特進科の女子生徒。そして。 「……ああ、新沢か」  慧は驚く咲希に代わるようにその名前を呼んだ。1年生の終わりに寮を移っていってから関係は悪いままだ。低学年の時は詰るような言い方をされる事もあったし、今は廊下ですれ違ってもお互い見て見ぬふり。この数年間は一度も話してない。  だけど、楽しく笑い合っていた時間があったのも事実なんだ。 「井丹も全部知ってるんだろ?」 「あれだけ大騒ぎになったんだもん、8年生は皆知ってるでしょ」 「それもそうか」 「……真沙子、全部賛成に投票してくれたんだよ」  へえ。言うが早いか、慧はマウスを動かした。画面は華達の映像のみに切り替わり、同時に音声も聞こえるようになる。 〈で? ハッキリ言ってよ! うじうじされるのが一番嫌!〉  最初は華の苛立ちに満ちた声だった。 〈だから、私と組みたくないんじゃないかって言ってるの〉  対する真沙子の声は吐き捨てるような強さはあるのに、辛うじて聞こえるような小さなもの。 〈何で?〉 〈……私がした事知ってるでしょ〉 〈知ってるに決まってるじゃん。咲希、普通科にいたんだよ?〉  ーー私?  思わず慧の方を振り返ったけれど、慧の視線は画面に向いたまま。視線は交わらない。  そうしている間にも、他のチームメイトを置き去りにして二人の会話は続く。
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