五、変わりゆく日

13/40

446人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
「良かったな」 「うん」  悩んで、時間も手間もかけて、それでもこのイベントを企画して良かった。生徒達の姿に心からそう思える。頬が緩むのを感じながら、カーソルを動かし続けた。 「あ……」  最後に手が止まったのは佳那のチームだ。佳那らしい穏やかなニコニコ笑みを浮かべ、携帯を手にチームメイト達と歩いている。一見何の問題も無さそうだけど、一人浮かない表情の生徒がいる。 「どうし……ああ」  心菜は他のチームメイトと一人距離をとったまま、誰と話すでもなくただ後をついていっていた。  今までの様子からも仲がいい友達がいないのはわかっていた。最近はEランクだったみたいだし、余計他の生徒との距離もあったのだろう。  でも、心菜にも笑って卒業してほしい……。  食い入るように画面を見つめていると、ふと画面から佳那の姿が消えた。  ーーあれ?  思ったのも一瞬。 〈何してるの?〉  今度は心菜の横から顔を出す。 〈え?〉 〈結坂さん、最後のヒントわかった?〉 〈え?〉 〈冷たい物の下に隠されているって何の事かって〉 〈……ううん〉  心菜は話しかけられた事に驚いているらしい。兄姉に食ってかかる時とはまるで別人で、借りてきた猫のような大人しさだ。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

446人が本棚に入れています
本棚に追加