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「良かったな」
「うん」
悩んで、時間も手間もかけて、それでもこのイベントを企画して良かった。生徒達の姿に心からそう思える。頬が緩むのを感じながら、カーソルを動かし続けた。
「あ……」
最後に手が止まったのは佳那のチームだ。佳那らしい穏やかなニコニコ笑みを浮かべ、携帯を手にチームメイト達と歩いている。一見何の問題も無さそうだけど、一人浮かない表情の生徒がいる。
「どうし……ああ」
心菜は他のチームメイトと一人距離をとったまま、誰と話すでもなくただ後をついていっていた。
今までの様子からも仲がいい友達がいないのはわかっていた。最近はEランクだったみたいだし、余計他の生徒との距離もあったのだろう。
でも、心菜にも笑って卒業してほしい……。
食い入るように画面を見つめていると、ふと画面から佳那の姿が消えた。
ーーあれ?
思ったのも一瞬。
〈何してるの?〉
今度は心菜の横から顔を出す。
〈え?〉
〈結坂さん、最後のヒントわかった?〉
〈え?〉
〈冷たい物の下に隠されているって何の事かって〉
〈……ううん〉
心菜は話しかけられた事に驚いているらしい。兄姉に食ってかかる時とはまるで別人で、借りてきた猫のような大人しさだ。
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