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〈そっかぁ……先輩達の事だから、1年生でもわかるような簡単なヒントだよね〉
佳那はそんな心菜を気にする様子もなく、歩調を合わせて隣を歩いてくれる。そのまま数歩歩いただろうか。
〈……あの時はごめん〉
心菜の声はしっかり届いた。
〈え?〉
〈ほら、1年の時……〉
それだけで何の事かはすぐにわかった。グラウンドの物陰で佳那に迫っていた姿は、忘れたくても忘れられない。気まずげに視線を逸らす心菜に何と返すのかと思いきや、佳那は勢いよく首を横に振った。
〈ううん、謝らないで。……私こそ謝らないとって思ってたの〉
〈何で〉
〈咲希先輩の事をお姉ちゃんみたいに思ってくっついてたけど……それを見て結坂さんがどう思うか、全然考えられてなかった。私だったらお姉ちゃんをとられたみたいで嫌だっただろうなって〉
〈……別に〉
二人の間には気まずい沈黙が流れた。足も自然に止まる。そこはちょうどピンク色が目立つ可愛らしいショップの目の前だ。流行りの看板に気づいた佳那が声を弾ませた。
〈ね、タピオカ好き?〉
〈え、まあ……〉
〈仲直りの印に一緒に飲まない⁉︎〉
何を言い出すかと思えば、お茶のお誘い。心菜は目を丸くする。でも。
〈いいけど〉
その返答に佳那の表情はパッと明るくなった。
一向に追いついてこない二人を不審に思ったのだろう。
〈どうしたー?〉
チームメイト三人も一度は通り過ぎた店の前に戻って来た。
そこからは願っていた通りの展開になった。
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