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部屋に帰って確認すると、持って出たのはどれも小説だった。ファンタジー、SF、恋愛、サスペンス、種類は色々、短編からシリーズ物まで仕様も様々。
下の方に目を凝らしながら捲っていくと、やっぱりあった。
『羨ましい』
『私も行きたい』
『いいな』
『逃げ出したい』
隠されていたのはどれもまた悲痛に満ちた言葉ばかり。
ーー誰がこんなの……。
考えながら四冊目の本を閉じようとしたところで、手が止まる。背表紙のカバーが折れていた。伸ばして付け直そうと、なんとはなしにカバーを取り外す。すると。
「え……?」
背表紙にはびっちりと文章が書き込まれていた。
『後継者なんてなりたくない。城之内とは関係ない世界で生きてみたい。自由に遊びに行って、お泊まりなんかもしてみたい。お父様に言えない自分が嫌い。こんなところにしか書けない自分が嫌い』
どんな気持ちでこれを書いたんだろう。綺麗な字だけど大きさや角度は少し乱れている。そしてここにあるという事は、他にもあるという事だ。
持ってきた全ての本のカバーを外していくと、そのほとんどに綴られていた。
『私もこんな恋愛してみたい。決められた婚約者なんて嫌』
『もう勉強なんてしたくない。普通の家の子はこんなに勉強してないよ。普通に大学に行きたい』
『息が詰まりそう! 家の皆もパーティーで会う人達も私が城之内の娘だから優しいだけ!』
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