五、変わりゆく日

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 夏のイベントが学年単位なら、次は寮対抗。秋に企画したのは久しぶりの大運動会だ。  姫達が企画してくれた運動会は楽しかったけれど、全部同じじゃ芸がない。でも、普通の運動会でもつまらない。いいところは受け継ぎつつ、生徒会メンバーで案を出し合って競技や当日の流れを考えた。  高ランク、運動が得意な人、仲がいい先端技術科。特定の生徒だけが楽しんでも意味がない。終わった後に全員が良かったと思える運動会にしたい。  それには我儘やお節介も含まれている。だから。 「慧っ! 咲希っ! お前らだろ!」  これくらいは許してほしい。  第一競技は『借り人競争。』名前の通り、選んだカードに当てはまる人を借りて一緒にゴールした順に点をつける。各寮から一人ずつ、十六レース行ってその合計得点がそのままこの競技の得点になる。  単純計算で各学年二人ずつ。だから博は何の疑いもなく競技に出てくれた。 「えー! 何の事かわからなーい! 頑張ってー!」 「ほんっとに! 後で怒るからな!」 「よし、皆で博を応援しよう! せーの」 『博先輩、頑張ってくださーい!』  グラウンドに大合唱が響き渡ると、流石の博も諦めたらしい。カードを掴んだまま走り出す。向かうのは勿論先端技術科のテントではなく、普通科のテントだ。 「井丹!」 「え」 「来てくれ!」  華は驚いたようだけど、博の叫びに何も言わずに出てきてくれる。 〈ゴール! 第一レース一着は先端技術科です!〉  息ぴったりの二人がゴールテープを切るのは当然の事のように思えた。
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