五、変わりゆく日

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 博と華の恋物語から始まった借り人競争は大いに盛り上がった。  遊びに行きたい寮生  仲良くなりたい他寮の同級生  一緒に食事に行きたい他学年  所作が綺麗だと思う人  運動神経がいい人  かっこいいと思う人  努力家だと思う人  お題は人それぞれ違うから、誰かが誰かを連れに来る度にどんなお題なのかと憶測が飛び交う。  博のカード以外恋愛関係は入れていないけれど、それでもいい機会と捉える生徒もいて。 〈ゴール! お題は……誘いたい人。どちらに誘いたいですか?〉 〈はい、クリスマスパーティーに〉 〈えっ……本当に?〉  新たに何組ものカップルができた気がする。  癒し系な先輩で謙太が連れて行かれた時は皆で笑って、元気印なんてカードを引いた花梨が一直線に眞子を迎えに来た時は誰もが納得した。慧は実は優しい人として連れて行かれて微妙な顔をしたし、咲希自身、感謝している人というカードを引いた歌に手を引かれた。  笑いばかり、時々感動あり、更に時々困惑ありな借り人レース。各テントからあがる歓声に、とりあえずの成功を確信する。  そして残すは一レースとなった。先端技術科からの最後の出場者は京子だ。 「京子ー! 頑張ってねー!」 「はーい!」  元気に手を振る京子はピストルの音と共に勢いよくスタートした。二十メートル程走り、テーブルから一枚のカードを掴み取る。裏面を確認して一秒。 「哲平っ!」  今度はグラウンドの中央から駆けて戻って来る。 「行ってきます!」 「うん」 「頑張って!」 「行って来い!」  哲平も速かった。
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