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使うのは徒競走と同じ百メートルのコース。その間に三つの目利きが用意されている。選手は答えが分かれば機械にそれを入力し、正解ならそのまま次の目利きへ、不正解ならば二回目の回答まで二十秒間待たなければいけない。目利きは全てのレースで変わり、これを八レース繰り返す。
「行ってくるね」
「行ってらっしゃい!」
「頑張ってください!」
「応援してますー!」
まずは謙太が後輩達の期待と声援を受けながら先陣を切った。だけど。
〈えーと……先端技術科、こちらも不正解です。二十秒間再回答ができません〉
「え、嘘!」
これは謙太には向いていなかったらしい。
第一レースの目利きは絵画鑑定と食器鑑定、そして味覚チェックだ。最初の二つは、並べられた二つの中からより高い物を選ぶ二択問題。
「こっち!」
〈正解です! 先端技術科トップです!〉
謙太はこれらを難なくクリアしてくれた。問題は三つ目の味覚チェックだ。
「嘘だって! 鶏肉だよこれ!」
謙太が叫んでも結果は変わらない。
「……そういえば謙太、何でも美味しく食べれる奴だよな」
「いや、そういう範疇超えてるだろ」
慧の呟きに博が真顔で返す。それくらい衝撃だった。
味覚チェックは三つのミニサンドウィッチの中から最高級鶏ローストが挟まれたものを選ぶというもの。ちなみに他の二つは鴨肉の燻製と焼豚を用意してもらった。
なのに、謙太の一回目の回答は焼豚。中華の名店が作ってくれたタレたっぷりの美味しいやつだ。食感どころか味も結構違う筈なのに。
「あ、抜かれた」
この呟きは誰のものだったか。テント内には笑うに笑えない微妙な雰囲気が漂って。
「高い絵画選ぶ方がよっぽど大変なのに……」
「いや、お前の美術センスはまた別問題」
会話もよくわからない方に進んでしまう。
結局、謙太は三度目の正直で正解を手にし、三番手でのゴールとなった。
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