五、変わりゆく日

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 使うのは徒競走と同じ百メートルのコース。その間に三つの目利きが用意されている。選手は答えが分かれば機械にそれを入力し、正解ならそのまま次の目利きへ、不正解ならば二回目の回答まで二十秒間待たなければいけない。目利きは全てのレースで変わり、これを八レース繰り返す。 「行ってくるね」 「行ってらっしゃい!」 「頑張ってください!」 「応援してますー!」  まずは謙太が後輩達の期待と声援を受けながら先陣を切った。だけど。 〈えーと……先端技術科、こちらも不正解です。二十秒間再回答ができません〉 「え、嘘!」  これは謙太には向いていなかったらしい。  第一レースの目利きは絵画鑑定と食器鑑定、そして味覚チェックだ。最初の二つは、並べられた二つの中からより高い物を選ぶ二択問題。 「こっち!」 〈正解です! 先端技術科トップです!〉  謙太はこれらを難なくクリアしてくれた。問題は三つ目の味覚チェックだ。 「嘘だって! 鶏肉だよこれ!」  謙太が叫んでも結果は変わらない。 「……そういえば謙太、何でも美味しく食べれる奴だよな」 「いや、そういう範疇超えてるだろ」  慧の呟きに博が真顔で返す。それくらい衝撃だった。  味覚チェックは三つのミニサンドウィッチの中から最高級鶏ローストが挟まれたものを選ぶというもの。ちなみに他の二つは鴨肉の燻製と焼豚を用意してもらった。  なのに、謙太の一回目の回答は焼豚。中華の名店が作ってくれたタレたっぷりの美味しいやつだ。食感どころか味も結構違う筈なのに。 「あ、抜かれた」  この呟きは誰のものだったか。テント内には笑うに笑えない微妙な雰囲気が漂って。 「高い絵画選ぶ方がよっぽど大変なのに……」 「いや、お前の美術センスはまた別問題」  会話もよくわからない方に進んでしまう。  結局、謙太は三度目の正直で正解を手にし、三番手でのゴールとなった。
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