五、変わりゆく日

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 そして、素晴らしい目利きで場を盛り上げてくれた生徒がもう一人。 〈全問一発正解! しかも速いっ!〉 「あいつにあんな特技があったとは……」 「ほんとに」  慧の言葉に頷きながらも、泰雅から視線を逸らす事ができない。  それくらい泰雅はすごかった。  一つ目の目利きは家具の目利き。根強い人気を誇り年々値段が上がるヨーロッパブランドのアンティーク家具と、アンティーク風に加工された最新家具とは遠目からにはどちらがどちらかわからなかった。  二つ目はクラシック音楽。誰もが一度は聞いた事がある曲でも、誰の作品かと言われたら中々答えられない筈だ。  だけど、泰雅はどちらもすんなり答えてしまった。回答する様子は自信に溢れていて、勘なんかではない事を伺わせる。  三つ目は用意したこちらとしても難しいんじゃないかと思っていた紅茶の目利き。希少な茶葉から丁寧に淹れた紅茶を、メーカー製のティーパックで淹れた紅茶から選び出す。これだけは三択だし、ティーパックと言えども十分美味しい。正直姫や柚子先輩くらいしかわからないんじゃないかと思ったけれど、泰雅はこれも一回で当ててしまった。 「珠里ー! 泰雅先輩すごいよっ!」 「うんっ……」 「泰雅ー! 行けーっ!」  泰雅を見つめる珠里も嬉しそう。同級生の眞子も拳を振り上げる。そして。 〈ゴール! ここまでのレースで最速です!〉  宏太のアナウンスと共に、皆揃ってガッツポーズを作ってしまった。  戻って来た泰雅は拍手と歓声と共に迎えられた。 「泰雅すごい! よくわかったね⁉︎」  思わず叫ぶと、返ってきたのは照れ笑いだ。 「いや、すごくないんです」 「何で!」 「いやだって……あの家具って姫さんが好きだったやつですよね? 寮に残ってたし、姫さんの家にもありましたし。クラシックは寮のライブラリにCDがあったし、紅茶は柚子先輩に飲ませてもらった事があったんで」  だから先端技術科のおかげです。それは謙遜とかではなく泰雅の本心で。慧と博の手が同時に伸びた。
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