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大運動会は先端技術科の優勝で終わった。
「あー! 楽しかった!」
「ねー! 今日はお祝いですね、って明日か!」
「え、何で⁉︎」
「博先輩の初デートじゃないですか!」
「たしかに!」
「祝勝会は明日っすね!」
勿論先端技術科の皆は喜んでくれたけれど、それだけじゃない。
「あーっ! あとちょっとだったのに!」
「惜しかったよな!」
「ねー! でもいい勝負だった!」
「ね、明日残念会でどっか行かない⁉︎」
「いいね! あ、あの子も誘っていい⁉︎」
「俺らもやろうぜ!」
他の寮の生徒も皆、悔しそうではあるけれど笑っている。
ーー良かった。
その光景を見回しながら撤退作業を見守っていると、両肩に衝撃が走った。
「さーきっ!」
「びっくりした!」
華が後ろから覗き込むように顔を出す。
「運動会大成功して良かったなーとか思ってたでしょ! 一人で笑ってたよ!」
「せーかい!」
華の言い方に思わず笑って、同時に気づいた。その顔はまるで興奮を隠し切れないみたいに紅潮している。これはこんな事を言いに来たんじゃない。
「で、本題は?」
「お願いっ! これから部屋来て! 服とメイクとアクセ! 相談っ!」
博との食事デートの相談だ。華は赤い頬をそのままに、片手を顔の前に出してお願いのポーズまでしてくる。それが可愛くて、こちらまでにやけてきた。
「それは華の得意分野でしょー!」
「そうだけど違うのーっ! 男の人と二人で食事なんて何年ぶりだと思ってるの! あれ以来誰ともないからね⁉︎」
「大丈夫、華はいつものままで可愛いから!」
「それでも来てー! お願い、精神安定剤!」
普段の華は頼りになる姉御肌だと思う。自分の意思をしっかり持っているし、それを恐れず口に出して貫き通すだけの強さを持っている。
そんな華がここまで混乱して興奮して、駄々っ子みたいになるなんて。
「ぶっちゃけどうなの?」
聞いてはみたけれど、答えはもうわかってる。
「……あり寄りのありで」
ーーああ、明日の先端技術科でのお祝い事がまた一つ増えた。
行くの答えの代わりに華の肩を抱き返して、二人へのお祝いは何にしようかなんて考えを巡らせた。
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