五、変わりゆく日

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 秋が過ぎ、林の葉が色づいて全て地に落ちると、一年最大のイベントがやってくる。 「咲希先輩綺麗です!」 「ありがとう、佳那もほんとに綺麗! 皆のセット順調?」 「あと4年生の四人で終わりです」 「了解。そろそろ私達は行くから京子と眞子と一緒に後をお願いね」 「はい! 任されました!」  そう、クリスマスパーティーだ。  昨日は毎年イブ恒例の先端技術科クリスマスパーティーで遅くまで盛り上がった。七面鳥にローストビーフ、ミートパイ、カラートマトとモッツァレラチーズを使ったカラフルなサラダに姫達の時の名残でかっぱ巻きと鉄火巻き。デザートはブッシュドノエルと大きなショートケーキ、プチシュークリームタワーにチョコファウンテン。クリスマスを連想するご馳走はみんな揃えたし、ボードゲームやカードゲームの即席トーナメント大会もやった。最後は宏太と眞子が地下からカラオケ機を引っ張り出してきて、音程も声色も多種多様な大合唱で締めくくった。  それで一夜あければ、今度待っているのはプレゼントの山だ。  華からはブリザーブドフラワーのボックス。ピンクのガーベラとオレンジ色のマリーゴールド、紫色のライラックに黄色いミモザ。色とりどりの花の周りを白いレースフラワーとアイビーの小さな葉が舞っている。  博と謙太からはジスランの首輪とリード。だいぶ汚れて擦り切れ始めた事に気づいてくれたんだろう、リードはテフロン製で、首輪にはジスランの名前と誕生日が入ったタグまでついていた。  尚人からは持ち手部分にクリスタルが入ったおしゃれなボールペンがきたし、その隣には入学して初めての心菜の名前が書かれたプレゼントが並んでいた。中身は昨年のヘアゴムと同じブランドのバレッタだ。  そして、一際厳重な高級ブランドの箱は先端技術科後輩全員からのもの。ドキドキしながら箱を開けると、キャンバス地のポシェットが入っていた。細いチェーンを調整すれば肩掛けにも斜めがけにもできて本当に使いやすそう。でも、それより目に留まるのは正面右下の刺繍だ。ジスランの全身と共に小さくアルファベットで文字が入っている。 【FOREVER】
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