五、変わりゆく日

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 その一言が全て。思わず刺繍を指でなぞると、ちょうど携帯が震えた。 〈はい〉 〈あいつらからのプレゼント見たか?〉  携帯越しでもわかる。慧も今笑ってる。 〈うん。ジスランの絵とFOREVERの文字の刺繍が入ったポシェットを貰ったよ〉 〈ジスランか。俺達は揃いのキーケース。FOREVERの文字は全員一緒で、あと博はラジコン、謙太はゲームの絵の刺繍だってさ〉 〈慧は?〉 〈……お前の名前〉 〈え?〉 〈俺のだけSAKI FOREVERだよ〉 〈何それ!〉  後輩達からのサプライズが嬉しくもあり、くすぐったくもある。SAKI FOREVERなんて刺繍入りのキーケースを貰って途方に暮れる慧を想像して、とうとう吹き出した。  他にもたくさんプレゼントがあった。同級生の名前もたくさんあったし、二、三言話したくらいの他寮の後輩からもあった。どこかで見た字で【ごめん】とだけ書かれたクリスマスカードもあった。  これが学園生活最後のクリスマス。プレゼントを開ける手も自然とゆっくり丁寧になる。  勿論、贈る物も奮発した。  皆と同じ考えだろうけど、8年生に贈った物は持って行けるように小さな物。  華と博には華が好きなブランドの新作マフラーを型違いで贈って、謙太には悩んでいたブルーライト眼鏡。尚人にはクラッチバッグで、心菜には似合いそうなワンピースと友達と行けるように食事券をプレゼントした。  京子や佳那、眞子達上級生には夏服や秋服、浴衣や小物を贈って、姫達から受け継いだ物もほとんど手放した。  贈っていなかったのにプレゼントをくれた人には美味しいチョコレートのアソートを手配した。勿論真沙子にも。  そして、寮生全員へは。 〈喜んでくれるかな〉 〈喜ぶだろ。誰が一番に気づくかな〉  8年生四人で依頼した大きな油絵。
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