五、変わりゆく日

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 夏にお願いして届いたのが昨晩遅く。時間をかけてもらっただけあって絵はとても手が込んでいる。  中世ヨーロッパのような小さなお城の周りで、少年少女達が駆け回ったりピクニックをしたり楽器を弾いたり読書をしたりしている。描かれている人数はちょうど今の寮生の数と同じ。顔は薄らとしか描かれていないけど、きっと誰が誰だかわかる筈だ。  それを皆が寝静まった真夜中に玄関に飾った。以前は天使の羽が生えた少女の絵が飾られていたそこは、三年間この絵を待っていたかのように物寂しいままだった。 〈そろそろ皆プレゼント開け終わって出てくるぞ〉 〈ん。私達も朝ご飯食べに行こっか〉 〈ああ〉 〈ちょっと待ってね〉  時計を見ればもう七時過ぎ。今日はやる事が目白押しでゆっくりしている暇なんてない。慧に声をかけながら最後のプレゼントに手を伸ばす。 【Merry Christmas】  いつの間に置いたんだろう。このシンプルなクリスマスカードだけは差出人どころか宛所も書いてない。中を開けばそこも同じで素っ気ない。元々のサンタクロースの絵の他はたった一行。 【明日19時に迎えに行く。天廣羊の中華】  笑いながら再び携帯を手に取った。 〈皆には?〉  開口一番それだけ尋ねたけれど、意味は伝わったらしい。 〈謙太に伝えた。俺達がいなくても夕飯くらい食べれるだろ〉  慧の声にもどこか得意げな笑みが感じられる。 〈博も?〉 〈ああ〉 〈宏太達も?〉 〈ああ〉 〈……被らない?〉 〈打ち合わせした〉 〈したんだ〉  男性陣が顔を突き合わせて誰がどの店にするか話し合っている姿を想像して、小さく吹き出した。 〈何だよ〉 〈ううん、楽しみにしてる〉  イブは寮のパーティーでクリスマス当日は学園のパーティー。それが当たり前だったし不満なんて一つもなかったけれど、思えば初めてのクリスマスデートだ。嬉しくないわけがない。自然と頬も緩む。 〈ああ。あと五分で下行くぞ〉 〈ん、急いで用意する〉  視線を下にやると、着たままのモコモコのパジャマが目に入った。まだ寝癖だって直してない。最低限寮生に見せてもいい姿にならなければ。 〈また後で〉 〈ん〉  短い言葉で締めくくって、今度こそ通話を切った。
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