五、変わりゆく日

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 クリスマスパーティーの準備は大変だけど、八回目ともなれば手順は慣れる。  朝食を終えたらまずはお風呂。ゆっくり湯船に浸かった後で、スクラブで全身を磨き上げる。お風呂からあがったらメイクをしてドレスに着替えて、お昼過ぎには美容師さん達が来てくれるから順番にヘアセット。そして最後にアクセサリー類を身につけたら準備は完了だ。 「うん、オッケ」  目の前の自分の姿に頷くと、いつの間に来たのか鏡越しに慧と目が合った。 「今年も化けたな」  華には信じられないなんて言われるけれど、これも褒め言葉なのは良くわかってる。振り返りながら口角を上げた。 「でしょ? 今年は皆で海外セレブをイメージしたロングドレスなの」  今年の先端技術科のテーマは【主役は私! ロングドレス】だ。一人一人が胸を張ってパーティーの主役でいてくれたらという願いが半分、今年も先端技術科の仲の良さを見せつけて視線を一人占めならぬ一寮占めしたいなんて気持ちが半分。全校生徒が笑って過ごせる学園にしたいとは思っているけれど、それと今日とは別。  一人一人のドレスをああでもないこうでもないと言いながら皆で選び合って、それぞれに似合う最高の物を見つけた。    咲希自身、今日は最後のクリスマスパーティー。先端技術科副寮長として譲るわけにはいかないから、姫から譲り受けた白地にスワロフスキーが散りばめられた細身のロングドレスに、白蝶貝でできた小花が散りばめられたドロップイヤリングと揃いのネックレスを身につけた。  だけど慧から返ってきたのは賞賛ではなく納得の相槌だった。 「ああ、それでか」 「何が?」 「下で1年達がレッドカーペットを歩く練習とやらをしてたぞ」 「え、何それ!」  ちょっと見てみたかった。なんだか論点がずれている気がしなくもないけれど、学園を軍隊みたいだと言っていた1年生達もパーティーを楽しんでくれているらしい。 「じゃあ最後の大仕事に行きますか」 「そうだな」  何の気無しに右手を伸ばせば、それは当たり前のように迎え入れられた。
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