五、変わりゆく日

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 後の事は京子や佳那達に任せて社交場に向かうと、パーティーの準備は着々と進んでいた。  入口には1年生達が期待していた通りレッドカーペットが敷かれているし、天井のシャンデリアには既に火が灯り会場を照らしている。奥の窓を飾るステンドグラスは磨かれて本来の美しさを遺憾無く発揮していて、更にその奥の舞台には大型の楽器も運び込まれていた。料理台も取り皿やトングなんかが揃い、後は料理の到着を待つだけだ。 「大丈夫そうだな」 「うん」  あの日の報道がきっかけで、学園の実情は世間の知るところとなった。当初は祖父の構想や抑圧された学園生活、摘発された著名人の数なんかが話題になったけれど、次第に学園に使われた税金にも話が及ぶようになった。  高過ぎる。  学園施設の維持費や数百人の生徒の生活費、教師や従業員の給与や社会実験としての必要経費を考慮したとしても、学園に使われてきたお金は莫大だ。そしてその一部が裏金として祖父や祖父の会社にまわっていたのも事実。  当然、学園への予算は見直される。  もうショップ街に車でも名画でも宝石でも何でも仕入れてくれる特別店はない。いきすぎたサービスや異常にお得なセットもなくなったし、元Sランク分のお小遣いだって減った。  それでも到底減額分を埋める事はできなくて、必然的にクリスマスパーティーの予算も減らさざるを得なかった。  しかも、一昨年までと違って学園全員参加だ。皆が楽しみにしているご馳走のクオリティは下げたくないから他をどうにかするしかない。
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