五、変わりゆく日

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 それを横目に改めて華の姿を見た。 「華、ほんとに似合ってる……首とかデコルテ、本当に綺麗」  屈託のない笑顔のせいか、華のためにあつらえたようなドレスのせいか。親友としての欲目を抜きにしても、今までで一番綺麗に見える。 「やった! そこ拘ったんだよね! ほんとはペアトップとかキャミとかにして肩までガッツリ出そうと思ってたんだけど」 「え、絶対似合ってたのに! 何でやめたの?」  華が諦めるなんて珍しい。すると思いもしない言葉が返ってきた。 「博に止められた〜」 「え?」 「派手過ぎ、露出し過ぎだってー」  勢い良く振り返ると、博は気まずそうに視線を逸らした。わかりにくいけど、確かにその耳は赤い。 「博が彼氏してる!」  思わず叫べば、キッと睨まれた。 「うるさい! 足まで思いっきり出してたんだからな⁉︎」 「でも似合ってたんでしょ⁉︎」 「似合ってても止めるわ! 言っておくけど咲希が同じ格好してても止めるからな⁉︎」  普段しっかり者の博がムキになるのが面白くて、何より嬉しい。それが顔に出ていたんだろう。 「俺達景品の最終確認行ってくるからな!」 「博、待てって」  博はぶっきらぼうに言い放って行ってしまい、苦笑した慧もそれに続いた。  二人の姿が見えなくなって、華と顔を見合わせる。 「ごめん、行っちゃった」 「大丈夫、あれは照れてるだけ」 「知ってる」  口に出して一秒。同時に吹き出した。 「相変わらず仲良いね。遠くから見ても華と博、すっごくお似合いだった」 「そっちの夫婦感には負けるわ」 「何、夫婦感って! でも博になら露出するなって言われても嫌じゃないんでしょ?」 「まあね。男に大切にされるなんて初めて」  そう笑う華は幸せそのもので。こんなにも綺麗になった理由がわかった気がした。
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