五、変わりゆく日

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「どうした⁉︎」 「いいから! こっちです!」 「こっちってどっち⁉︎」 「こっちはこっちです!」  こんな時ばかりは踊りやすいように裾が広がったドレスにして良かったと思う。まあ他の寮生とはダンスフロアで踊っても、慧とは姫と康介の秘密の中庭を使わせてもらう事が殆どだけど。  誘導されるがままに駆け、食事ゾーンの横を通り抜け、一段上へと上がる。その先はダンスフロアだ。 「え……」  ーーやられた。  思ったのは慧と同時だろう。  オーケストラの演奏は既に始まっているのに誰一人踊っていない。生徒達はまるでダンスフロアを囲むように四辺に並び、全ての視線はこちらに集中している。その最前列で笑っているのは四方に散って行った筈の寮生達だ。  珠里はするりと泰雅の隣に並び、後ろからついてきていた謙太や眞子達もいつの間にやら最前列に加わっていた。  こんな事を企てるのはただ一人。博が謙太と華と並んで口角を上げている。 「……何これ」  何となく勘づいていても尋ねずにはいられない。すると、お節介の仕返しとも言わんばかりの言葉が返ってきた。 「お前らの事だから中庭とかでひっそり踊って終わりにしそうだからお膳立てしてやったんだよ」 「ひっそり終わりにさせてよ」 「ここまで学園変えた奴らがひっそり終わっていいわけないだろ。学園の象徴って事で最後に一仕事していけって」  見回せば華も謙太も哲平も、京子も佳那も眞子も宏太も歌も、他の寮生達も。皆が頷いてみせた。その後ろに並ぶ他寮の生徒達からも期待の篭った視線が注がれる。  先に折れたのは慧だった。 「咲希」 「ん?」 「諦めろ」  言葉と共に手が伸ばされる。早く取れと言わんばかりの目に、咲希も折れるしかなかった。
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