五、変わりゆく日

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 続々とダンスに出てくる生徒達と入れ替わるように横に捌けると、得意げに笑う博に出迎えられた。 「いい思い出になっただろ?」 「お前なあっ」  慧が怒っても何のその。本気で怒っているわけではないから周りに残った寮生達も誰も怖がってくれない。寧ろ。 「えー素敵でしたよぉっ!」 「ねー! 永久保存希望です!」 「ぜひ撮影のためにもう一回!」  悪ノリが加速する始末。こうなれば何を言っても無駄。 「あー、もうわかったよ!」 「だけど湊、撮影のためのもう一度は絶対拒否!」 「えー」  力強く返せば、ダンスフロアの一角は笑いの渦に包まれた。  今までならすぐに食事ゾーンに引っ込んでいたところだけれど、今日は学園最後のクリスマスパーティー。そのままフロアに残って色々な人と踊った。哲平や宏太、泰雅や順達後輩達とも踊ったし、卒業してからこんな機会があるかわからないから数年ぶりに博と謙太とも踊った。吉川めぐと参加している尚人とも目が合ったけど、それは何だか違う気がしてお互い頷き合ってスルーした。  勿論咲希だけではない。博も謙太も、普段は嫌がる慧さえも。 「ケ・イ先輩っ!」 「わかった、わかってるからその顔やめろ」 「咲希先輩! 慧先輩借りまーす!」 「はーい! なら私も宏太の事借りていい?」 「勿論どうぞー! さーて、先輩達と踊りたい先端技術科生、挙手っ!」  笑顔で迫ってくる眞子達の勢いに押されて、時間が許す限り寮生達と踊った。
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