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「私……?」
「うん、そう」
見上げる眞子に微笑みかければ、その表情は益々歪む。
「でも私、ランク落ちもしたしっ」
「人一倍努力して戻したでしょ?」
「それだって先輩達が助けてくれたからで!」
「なら、次は眞子が寮生達の助けになってあげて?」
「……咲希先輩が止めてくれなかったら寮を出ようとしてましたっ」
「止めてくださいって言いに来てくれてありがとう」
私の所に来てくれて本当に嬉しかった。その言葉を合図に眞子の感情はとうとう決壊した。
「ゔぅーっ」
出てくるのは意味をなさない言葉ばかりで、離したくないとばかりに背中に回された手に力が入る。着ているワンピースはクリーニングしたてだけど、いつかのように涙の跡でいっぱいだろう。
眞子の頭を撫でながら、もう一度慧に目配せした。
「でも実は理由はこれだけじゃないんだな。ね、慧」
泣いてくれるのも嬉しいけれど、やっぱり最後は笑ってほしい。慧はすぐにわかってくれた。
「ああ、あとの理由はあれだな。眞子が暴走したら宏太が止めるだろうけど、宏太が暴走したら眞子は絶対乗っかるだろ? 被害が拡大する」
「正直その理由も大きい」
あえての真顔で断言すると、宏太と哲平が小さく吹き出した。釣られるように眞子にも笑みが戻る。
「んっ……そういう事なら仕方ないので拝命しましょう」
「うん、お願い」
先端技術科と寮生を愛してくれている眞子なら、きっと寮をいい方向に導いてくれる。しっかりしていて周りが見える宏太なら、きっと眞子や寮生達を支えてくれる。この形が一番いいと思った。
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