六、巣立ちの日

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「私……?」 「うん、そう」  見上げる眞子に微笑みかければ、その表情は益々歪む。 「でも私、ランク落ちもしたしっ」 「人一倍努力して戻したでしょ?」 「それだって先輩達が助けてくれたからで!」 「なら、次は眞子が寮生達の助けになってあげて?」 「……咲希先輩が止めてくれなかったら寮を出ようとしてましたっ」 「止めてくださいって言いに来てくれてありがとう」  私の所に来てくれて本当に嬉しかった。その言葉を合図に眞子の感情はとうとう決壊した。 「ゔぅーっ」  出てくるのは意味をなさない言葉ばかりで、離したくないとばかりに背中に回された手に力が入る。着ているワンピースはクリーニングしたてだけど、いつかのように涙の跡でいっぱいだろう。  眞子の頭を撫でながら、もう一度慧に目配せした。 「でも実は理由はこれだけじゃないんだな。ね、慧」  泣いてくれるのも嬉しいけれど、やっぱり最後は笑ってほしい。慧はすぐにわかってくれた。 「ああ、あとの理由はあれだな。眞子が暴走したら宏太が止めるだろうけど、宏太が暴走したら眞子は絶対乗っかるだろ? 被害が拡大する」 「正直その理由も大きい」  あえての真顔で断言すると、宏太と哲平が小さく吹き出した。釣られるように眞子にも笑みが戻る。 「んっ……そういう事なら仕方ないので拝命しましょう」 「うん、お願い」  先端技術科と寮生を愛してくれている眞子なら、きっと寮をいい方向に導いてくれる。しっかりしていて周りが見える宏太なら、きっと眞子や寮生達を支えてくれる。この形が一番いいと思った。
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