六、巣立ちの日

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 眞子を宥める手は止めず、次は哲平に向き直る。 「まあ二人共暴走する可能性も高いから、その時は哲平、フォローお願いね」 「任せてください!」  力強い頷きと言葉が何とも頼もしい。哲平もいつの間にか背が伸びて今は見上げる程。入学した時から見てるのに、こんなに大人びたなんて気づかなかった。でも。 「これからも皆の頼れるお兄さんでいてあげて」 「あ、京子と佳那の悪ノリは怒るところは怒れよ? 佳那も静かにふざけるからな」 「……あいつらに勝てるわけないじゃないですか」  謙太と博の激励で、途端に声が小さくなる。これも哲平らしくて、宏太と眞子まで声を出して笑った。  そして最後は宏太。 「宏太にはもう一つお願いがあるの」 「何ですか」 「生徒会長を目指してほしい」  これも随分前から考えていた事。生徒会長権限で後任を指名したり強制したりするような事は勿論したくない。だけどできるなら可愛い後輩に跡を継いでほしい。  宏太は一拍の間を置いて、大きく頷いてくれた。 「絶対立候補します! それで、近くで学ばせてもらった事活かして、先輩達が変えてくれた学園を守って、これからもちゃんと全員卒業していけるようにしますから!」  その真っ直ぐな瞳に、全て任せて大丈夫だと思った。 「ああ、頼んだ」 「皆で待ってるから」  最後の胸のつかえがとれて、自然と息が漏れた。  視界の端で腕時計に視線を落とした博が動き出す。 「時間だ、行こう」 「……うん」 「ああ」  また泣きそうになる眞子を見ると後ろ髪を引かれる思いだけれど、時間は止まってくれない。 「行こっか」 「……はい」  眞子の背を押して外へと促す。  このバルコニーで姫や康介、柚子先輩や蓮先輩達にたくさんの武器を習い、想いを託してもらった。ただお茶会を楽しんだ日もあったし、辛い時はここで星を見上げた事もあった。たくさんの思い出がある大切な場所だ。  もう一度目に焼き付けて、バルコニーを後にした。
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