一、

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一、

 ここに連れて来られて百日が過ぎても、状況は何一つ変わらなかった。  与えられたスケジュール通りに膨大な授業と課題をこなす、まるで人形にでもなったかのような毎日だ。  逆らってこれ以上行動を制限されたり日を伸ばされたりする事は避けたい。だから逆らえない。  テレビもパソコンも、授業での使用以外は一切使えない。娯楽と言えば本棚にある小説を読む事くらいで、それも随分前に読み切ってしまった。  今日も変わらない一日になる筈だった。  それが破られたのは午後の授業が始まってすぐの事。世界の伝統音楽を鑑賞する授業中、鍵がかかっている筈の扉が乱暴に開かれた。 「ちょっ、困ります!」 「煩い」 「秀樹様!」 「煩い、出て行け」  講師が慌てて止めても関係ない。城之内は睨みつけて黙らせると、顎で扉を指して締め出してしまった。  その様子は尋常じゃない。いつもの楽しそうな、どこか人を見下したような態度はどこにもなくて、ただただ無。まるで怒りすら通り越したように、瞳には何の色も光もない。 「城之内、先輩……」 「なあ、知ってるか?」  城之内は静かに咲希に歩み寄った。それが怖い。
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