六、巣立ちの日

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 車は山を横に見ながら走り続けた。やがて高速道路に乗っていつしかそれも降り、高層ビル街を抜けて閑静な住宅街へと進む。そして一軒の豪邸の前で停車した。  高級住宅街の中でも一際大きいその家は、白い外壁と緑が映える庭が先端技術科を彷彿とさせる。はやる気持ちを抑える事ができなくてジスランと共に一番に車を降りると、同時に門が開いた。 「待ってたよーっ!」 「お前ら荷物はそのままでいいぞ! お兄様が運んでやる!」  最初に飛び出して来たのは柚子先輩と蓮先輩。 「慧! 咲希! 博! 謙太!」  清次郎先輩はどこから駆けつけてくれたのかグレーのスーツ姿で、それが本当によく似合っている。 「お疲れ様」 「四人共立派になったな」  続いて出てきてくれたのは園香先輩と清澄先輩。二人も全然変わらない。 「咲希、慧、さっき出してきたぞ!」 「ついさっき入籍してきたわ……本当にありがとう」  健司先輩と亜実先輩は見ているこちらまで幸せになれるくらい輝いている。亜実先輩が照れながら見せてくれた左手の薬指にはキラリと光る物がはまっていた。 「咲希ーっ! 慧! 謙太! 博!」 「待て! 予定日来週だぞ! ほんとに走るなって!」 「一人で会ったくせに! 私は抱き締めたいの! 咲希、綺麗になった! お姉さんになったね!」 「悪かった! 悪かったから!」  相変わらず雄貴先輩は海里先輩に弱くて。 「博と謙太は初めてだな、雄貴先輩と海里先輩の娘さんの望美ちゃん! 望美ちゃん、新しいお兄ちゃん達だぞー」  二人の後ろから何故かすばる先輩が望美ちゃんを抱いて出て来た。  家族も待っていてくれた。 「咲希」 「おめでとうございます! 体はもう?」 「ええ。陽希は中で寝てるから会ってあげてくれる?」  まどかお姉さんも。 「お疲れ。ゆっくりしろよ? 尚人は家に顔出して明日こっち来るってさ」  玲央も。 「一樹はまだ若干意地張ってるけど明後日には秀樹さんと一緒に強制招集かけてるから。心菜も明後日帰って来るんでしょ?」  由羅も笑っている。  そして。 「お前ら、よくやった」 「卒業おめでとう」  康介と姫の姿に再び視界が歪んだ。  ーーああ、帰って来た……。  本当に卒業したんだという実感と共に、ここに住んでいたわけではないのにそんな感想まで湧いてくる。 「はいっ!」  手を伸ばせば、たくさんの家族が受け止めてくれる。  すぐ横では慧も博も謙太も揉みくちゃにされていた。  これからもこの大切な人達と生きていく。  それは考えただけで幸せになれる、でも間違いない未来で……慧と顔を見合わせて笑った。
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