エピローグ

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 凱旋門へと続くシャンゼリゼ通りは夜九時を越えてもイルミネーションや店の照明が爛々と灯り、人々が家路につく様子もない。至る所に大きなクリスマスツリーや色とりどりのリース、プレゼント飾りが飾られていてクリスマスムードを盛り上げる。  そんな中で帰る気が起きるわけもなく、咲希と慧もクリスマスディナーを終えてイルミネーションの下を散歩する事にした。 「あ、ジスランもクリスマスケーキ食べてご機嫌だって尚人から。さっき由羅からも写真が送られてきたよ」 「そうか。玩具も気に入ってくれるといいな」 「そうだね。博からのメッセージ見た?」 「ああ。井丹と一緒に暮らすみたいだな」 「そう! 華の専門学校と博の大学の中間地点に家借りるって」 「謙太の就職先も近いよな?」 「みたい! 珠紀先輩とたまたま同じ所なんてすごいよね!」  実家に預けているジスランの話や親友達の話に寮生達の話。するのは何でもない話ばかりだけど、その時間が愛おしい。  吐き出す息は白いのに寒さも感じなくて、ただのんびりと歩き続けた。  やがて眩い光を放つ物が減っていき、水の香りが漂ってきたかと思えば、セーヌ川のほとりに出る。街路樹のイルミネーションは無くなったけれど、対岸ではクリスマスイルミネーションに覆われたエッフェル塔が幻想的な光を放っていた。 「綺麗ー!」  今夜は満月。セーヌ川の水面にはエッフェル塔の隣にまん丸の月が映り込む。真っ白な息と共に感嘆の声を出さずにはいられない。  それは本当に不意打ちだった。 「なあ」 「ん?」 「結婚しよう」  
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