番外編

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番外編

 生まれた時から将来は決まっている。 「まどかは本当に可愛いな」 「あなたは勝ち組なのよ」  美容に関する事業をチェーン展開している家に生まれた私は何不自由なく育った。 「このワンピース可愛い!」 「そうね、あとはこの髪飾りもまどかに似合うんじゃない?」  欲しい物は何でも買ってもらえたし。 「このブランドはクラスの子が持ってるの! もっと高いのがいい!」 「かしこまりました、お嬢様。放課後には揃えるよう手配致します」 「お嬢様にお届け物ですよ。事業部の者からお嬢様にもお中元ですって」  周りの大人はみんな言う事を聞いてくれた。   「一番をとりなさい」 「あなたは蘭沢グループの娘なんですからね」  与えられる要求は高いけど。 「昨日のテスト、学年一位は蘭沢まどかさんです!」  私には努力すれば伸びる才能もあった。 「お前が男だったら良かった」  何度言われたかわからない。でも、性別なんて関係ない。私には家柄も実力も容姿も揃っている。  人の上に立つ自信があった。  全てが変わったのは十二の時だ。 「上流階級の子息も多く通うらしい。これからの人脈を作り、上に立つ事を覚えるにもいいだろう」  お父様の意向でネデナ学園に通う事になった。 「蘭沢さんSランクなんだって⁉︎」 「流石だよ!」 「今特別室を片付けさせているから!」  そこは汚い世界の尺図のような場所。ランクで全てが決まる。  貶め合うのは当たり前。上の人間は上で在るために手段を選ばず、下の人間は表では上の人間に媚びへつらうけれど、裏では悍ましい陰口を叩く。  ーーあさましい。  上で在りたいなら上で在れるよう在ればいい。下で在りたくないなら努めればいい。  それなのに多くは口だけ。動くとしてもカンニングや騙し合い、卑怯な手を使ったジュエルゲームばかり。
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