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そうこうしている間にも、使用人達の手によってテーブルセットが行われていく。最後に銀食器が並べられると、まどかは優しく微笑んだ。
「さあ、食べましょ? メインの一品目はお花ちゃんの好きな海老を使った料理よ?」
「どうして私の好きなもの……」
「あなたのお兄さんに聞いたのよ」
今日はその笑顔もぎこちない。違和感を覚えながら席についた。
異変は前菜を食べ終え、スープが出された時に訪れた。
「春キャベツのポタージュでございます」
「ありがとうございます」
鮮やかな緑色のスープがテーブルに置かれると共に、どこか甘い匂いが立ち込める。まどかの椅子が音を立てたのは、咲希が美味しそうなんて思いながらスプーンを手に取るのと同時だった。
「失礼っ!」
「えっ⁉︎」
まどかは椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり、そのままの勢いで部屋から出て行く。手で口元を押さえ、飛び出す様は尋常じゃない。そしてちらりと見えたその顔は、濃いメイク越しでもわかる程血の気が引いていた。
そういった知識に疎い咲希でもわかる。これは……。
「蘭沢先輩! 大丈夫ですか⁉︎」
居ても立っても居られなくて、慌てて後を追いかけた。
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