番外編2

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番外編2

「ねえ、これあと何時間かかるの……?」 「諦めろ……」  ーー結婚式の準備がこんなに大変だとは思わなかった。 「はいはーい! 私はこれ! このピンク推しですっ!」 「このドレスなら慧のタキシードはこちらかしら?」 「園香、柚子……可愛すぎるわ、やっぱりお色直しは七回くらい必要だと思うの」 「でもこちらのブランドと他とではイメージが違いすぎて、会場の雰囲気を合わせるのが大変では」 「……そうね、それなら違うコンセプトで二会場用意して途中で移動するのはどうかしら」  当事者そっちのけでああでもないこうでもないと話し合うもはや家族のような存在達を前に、慧と二人、顔を見合わせる。  卒業して一年。ネデナ学園に入学する前は結婚式なんて出た事もないし、卒業してから参列したのだって健司先輩と亜実先輩の式だけ。その式だって、料理の美味しいレストランに先端技術科の仲間だけを集めた気軽な式だった。しかも気遣い上手な二人らしく、ご祝儀不要・会費制で、メイン料理の後にはテラスでバーベキュー。マシュマロなんかのデザート串は新郎新婦が焼いてくれるなんていうサービス付きで、みんなでたくさん写真を撮って、喋って、笑って、食べた。楽しかった記憶しかないけれど、あれが結婚式として一般的でない事くらいはわかる。  結婚式の事なんて何もわからないから、助けてもらえるのは有り難い。  でも。 「テーブルクロスはレースが良いわよね。海里に言って最高級のレースを何種類か最優先でおさえてもらいましょう」 「安心してください、もう手配済みです」  ーーなんだろう。 「この会場も可愛い! でもこっちも二人に合いそう! でもシャンデリアがなんかちがーうっ!」 「床は無理でも壁紙や照明は一時的に取り替えてもらえないかしら?」 「可能かと思いますが、そうすると今度はテーブルセッティングとの雰囲気が合わなくなるのでは?」 「家具なら任せて。ヨーロッパから取り寄せるわ」  ーー話がどんどん大きくなっていく!  思わず吐き出される息を止める事はできなかった。
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