番外編2

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 最初はここまで大それた事にはなっていなかった。卒業した面々は勿論、学園に残してきた後輩達にも来てもらえるように春休みにしたのだから、招待客が多い事はわかっていた。  でも、まだ卒業して一年。お給料は貰っているとはいえ姫の会社でインターンをさせてもらっている身だし、自分達はもう見栄を張らないといけないSランクでも何でもない。  皆が集まれる大きな会場と、皆が喜んでくれる美味しいご飯があればそれで良い。皆で笑い合えて、皆に結婚を報告できたら、それだけで十分だ。慧と二人、意見が一致した。  だけど、それに待ったをかけた人達がいた。 「えーっ⁉︎ ゴンドラは⁉︎ フラワーシャワーにキャンドル演出にガーデンパーティーにアフタヌーンティー二次会はっ⁉︎ やってもらいたい演出リストアップしてるからねっ!」  真っ先に叫び声をあげたのは柚子先輩。 「お前らが卒業する前に小さい式で済ませた俺らが言う事じゃないんだけど、でも何かなあ。二人には大勢に盛大に祝われてほしいんだよなあ」  蓮先輩は残念そうに頬を掻いたし、 「そもそもこの人数を呼ぶのに質素なんて難しいんじゃない? それに、皆あなた達が幸せになる姿を見たくて集まるのよ? 目一杯華やかかつ煌びやかにして、幸せな姿を見せなさい。あなた達はそれだけの事をしたんだから」  奈津紀先輩には正論で諭された。    そして。 「いい? あなた達は象徴なの。あなた達がいなければ今も亜実を取り戻せていなかったかもしれないし、他にも脱落者がいたかもしれない。生徒は皆恐怖で縛られて、笑う事すらできなかったと思うわ。先端技術科の寮生がこうやって集まれるのもあなた達のおかげなの。これは私達の我儘かもしれないけれど、それでもあなた達には盛大な式で祝われてほしいのよ」  姫にこう言われては、頷く以外にない。  挙式代は全部もつからなんて付け加えられて慌てて拒否したけれど、一樹やまどかお姉さんまでこちらが出すなんて出てきて揉めに揉め、最終的には。 「こいつらが折れるわけないだろ、諦めろ。兄姉らしい事がしたいんだよ」  康介の鶴の一声で、姫・康介夫婦と一樹・まどかお姉さん夫婦がほとんどの支払いをしてくれる事に決まってしまった。
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