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「皆は?」
「元気にはしてるけどな、全員お前の事心配してる。皆中々笑わないし、健司先輩達も卒業するまでずっと気にしてた」
「そっか」
「博と謙太も毎日お前を助ける事ばかり考えてたし、井丹もすごい顔してるからな」
博。謙太。華。毎日顔を付き合わせていた皆とも、もう半年も会ってない。皆の顔が脳裏に浮かんで心が締め付けられる。
「会いたいなぁ……」
呟くと、背中に回った手がポンポンと二度背を叩いた。
「会ったら礼も言っとけよ。俺が抜け出すのあいつらが協力してくれたんだ」
「博と謙太がシステムに侵入してカメラやセンサー切り替えてくれたし、井丹がその間俺らの携帯を預かって生徒会の仕事をしてるみたいに取り繕ってくれてたんだ」
「そうなんだ……」
見つかったらまずい事はわかりきってる。それなのに、だ。まだ涙は止まらないのに、口元は綻んだ。
「あとはジスランもだよな」
慧はジスランに話しかけるように言った。
「え?」
「こいつ、ほんとに賢いよな。静かにって言えば一つも吠えずについてくるし、咲希を探せって言ったら一発でこの部屋探し当ててさ。ジスランのおかげだ」
そうなの? 埋めていた顔を離して見ると、ジスランは嬉しそうに、それでいて誇らしそうにこちらを見上げている。尻尾をはちきれんばかりに振って、隙あらば顔中を舐めまわそうとしてくるその姿に、また愛しさと喜びが込み上げた。
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