二、

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「……わかった」  慧は少しの間惜しむように黙っていたけれど、やがて体を離した。そしてポケットから取り出した物を咲希に差し出す。 「これ……」 「必要だろ?」  もしもの時のために持ってきた。まだ少しぎこちないけれど、その口角は上がっている。 「博達にも手伝ってもらって性能上げといたからな」  それはつまり、先端技術科にとってはまたとない状態だという事で。 「ありがと」  咲希も微笑んで懐かしいそれに手を伸ばした。 「……久しぶりなんだけど、うまくできるかな」 「できるだろ。俺達の七年間をなんだと思ってるんだ」 「そうだけど……」 「それに、約束守ってくれなきゃ困る」  拗ねるような有無を言わせない言葉。それは信じてくれているから、想ってくれているからだとわかってる。 「うん」  どちらからともなく触れるだけのキスをした。 「じゃあ気をつけて」 「待ってる」 「うん、絶対戻るから待ってて」  最後にもう一度それぞれを抱き締めて、暗い廊下を進む一人と一匹の後ろ姿を見送った。  胸元で大切に持つのは、見た目は電子辞書、中身は一般ではまずお目にかかれないハイスペックパソコンだ。清澄先輩にもらい、蓮先輩と柚子先輩がアップグレードしてくれて、また慧達が手を加えてくれた。  これで手段ができた。私は一人じゃない。ほっと息を吐く。  時刻はまだ午前二時。でも体は興奮していて、とても眠れそうにない。  ーーなら。  向かうのはベッドではなく勉強机だ。半年間で鈍った勘を取り戻すため、パソコンを開いた。
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