二、

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 チャンスは思いの外早くやって来た。  慧達が来てくれたその週末、授業中に扉が開いたかと思えば再び城之内が入って来る。 「あの、授業中で」 「五月蝿いな。そんなの止めだ、出て行け」 「でもっ」 「出て行け」 「はいっ!」  慌てる講師を睨みつけて追い出してしまうのも前回と全く同じ。でも、今日は学園にいた頃のような余裕を感じさせる笑みだ。  講師が出て行き扉が完全に閉まると、意地の悪い笑みを浮かべて咲希の前の椅子に座った。 「どうしたんですか?」 「君にいい報告を持って来たんだ」 「いい報告?」 「ああ」  城之内が差し出したのは数枚の書類。見れば咲希の小テストの結果や授業の様子が事細かに書いてある。講師からの報告書のようだ。 「流石はSランク様だね。いい事ばかり書いてある」 「……ありがとうございます」  褒めに来たわけがない。こんな顔をするという事は何かある。嫌な予感はすぐに的中した。 「あの人はこの結果にお喜びでね。今度は君を跡取りにするって言い出した」 「え?」 「良かったね。たった半年の努力で城之内家の跡取りだ。金も権力も全部君の物だよ」 「だって、一樹は……?」 「君が一人前になるまでの繋ぎってところかな? ああ、当然あいつは知らないよ。君が一人前になるか優秀な結婚相手を見つけたところで、いきなり発表するんじゃないか?」  本当に良かったね。城之内はそう言うけれど、絶対本心は違う。笑っているのも嘲笑だ。
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