二、

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 一樹との仲が拗れればいいと本気で思っている。  少し腹は立つけれど、ここで感情的になったらダメ。バレないように小さく息を吐き出した。 「それで?」  出てきた声は自分でも意外なくらい落ち着いていた。 「あれ? そしたら一樹の努力はどうなるんですかとかほざくかと思ったのに」 「ほざきませんよ、そんな事」  そう言って口角を上げる。  この七年半で嫌というくらい学んできた。高ランク同士の戦いは取り乱した方が負け。勝気な笑みを、それが無理なら無表情を貫き通せ。そしてもう一つ。 「腹が立ちません?」 「そうだね、腸が煮え繰り返りそうだよ」 「そうじゃなくて……人にいいようにされるなんてあなたらしくない」 「……何が言いたい?」 「私は思い通りになんてなりたくない。協力して下さい」  敵の敵は味方だ。 「は?」  城之内は訝しげに咲希を睨みつけた。 「何で俺が」 「今のままじゃ跡取りは私か一樹なんですよね? 一番長い間努力をさせられてきた城之内先輩は三番目の候補」 「だから?」 「一緒に一泡吹かせませんか?」  にっこりと、姫を思い浮かべながら笑みを作った。目はしっかりと合わせたまま絶対にそらさない。  城之内はたっぷり十秒は固まった。だけど。 「……君に何のメリットが?」  再び口を開いた時には、最初の意地悪げな笑みは見る影もなくなっていた。
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