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まどかは何も聞いていないらしい。完成した姿で出迎えると開口一番。
「……驚いた、花園のお花ちゃんがひとり立ちね。桜子ちゃんを初めて見た時を思い出すわ」
なんて笑う。
そして昼食の用意が終わり、使用人達が下がったところで再び開いた扉に目を見開いた。
「秀樹」
「やあ」
二人の第一声はそれだけだ。
それぞれと会う事は何度もあった。だけど二人が揃っているのを見るのは1年生の時以来。懐かしい光景だ。なのにお互い喋ろうとしない。
「あの……」
咲希が沈黙に耐えかねて口を開いた瞬間、口火を切ったのはまどかだった。
「この子に何する気? 逆恨みは男らしくないわよ」
いきなりの攻撃的な言葉に城之内も対抗する。
「随分な言い草だな。久しぶりに会った寮長に久しぶりの一言くらいないのか? しかも俺がそんな小さな男だと?」
「あら、あなたならやるでしょ? 信用してるのよ」
「信用? 過小評価の間違いだろ」
「間違ってる?」
「間違ってる」
あまりの早口に口を挟む隙もない。しかも首を絞められたのだから、間違っていない気すらする。どうしたらいいか戸惑ったけど、とりあえず。
「あの! 時間ないんですよね⁉︎ それに赤ちゃんに悪影響だからやめてください!」
まずはそこからだ。
咲希の言葉に目を見張ったのは城之内だ。
「赤ん坊?」
「はい」
「……ああ、だから連絡しても返さなくなったのか。お前も趣味悪いな」
「五月蝿いわね。あなたとほぼ同じでしょ」
二人はそれだけで通じ合ったらしい。やがて同時に息を吐いた。
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