二、

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 屋敷の中を物音を立てないように移動して、連れられてきたのは週に二日祖父と夕食を共にする食堂だった。広々とした食堂には、大きな長テーブルの他には使われていない暖炉と装飾類しかない。城之内はそのただの飾りかと思われた暖炉の前に立つと、力を込めて扉を押した。 「あ……」  暖炉は途中からひとりでに動きだした。扉だけでなく暖炉全体が壁に沈み込んだかと思うと、今度は横にずれていく。瞬く間に人一人が余裕で通り抜けられるくらいの道が出来上がった。 「行くよ」  「はい」  中は学園の『はじまりの家』とよく似ていた。真っ白な壁に今までいた空間とは似ても似つかない近代的な作りの階段。狭いそこでは足音がよく響く。そして下まで降りると、現れるのは巨大なアーチ型の天井だ。  懐かしさに思わず見回すと、見透かしたように声をかけられる。 「ここを通って逃げ出したんだって?」 「はい」 「あの後大騒ぎで大変だったみたいだよ? まあ、あの人が金で誤魔化したみたいだけどさ」 「そう、ですか」 「ここが世間に明るみにならなきゃ、お偉いさん方はドリームランドを別荘代わりに使う気だったみたいだからまあ愉快だけどね」  城之内は薄ら笑いを浮かべながらトンネル内を歩き出した。前に来た時は左右どちらも果てしなく続いていたけれど、今回は違う。後ろを振り返ると、すぐ先は行き止まりだ。  そして暫く歩くと黒塗りの車が止まっていた。 「カメラは止めたけど、念のため離して止めたんだ。乗って」 「はい」
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